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アイデア No.397 2022年 4月号

編集: アイデア編集部

定価(税込)3,300円

発売日2022年03月10日

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小さな出版活動を支える各国のアートブックフェアを紹介。出版流通の新たな可能性を考察します。 アイデア編集部 : 西

内容

アーティストブックやZINEの制作者、出版社、ギャラリー、書店などが一堂に集まり、訪れる人たちと対話しながら出版物を販売するアートブックフェア。版権販売など出版に携わる業者間の取引が中心で商業的な側面が強い見本市やブックフェアとは異なり、アートブックフェアはアーティストや周辺のコミュニティの活動を支援することを目的とした公共性の高さが特徴で、各国のフェアに出展し、ローカルのコミュニティと交流しながら活動の幅を広げていくアーティストや出版レーベルも多い。本を介した文化や知識の交換とともに、既存の経済システムに頼らない出版流通の可能性を探る機会ともなっている。

 

しかし、ここ数年は世界的なパンデミックの影響により多くのフェアが開催中止やオンラインへの移行を決断したり、ロジスティクスの問題も発生するなど、さまざまな課題を抱えることになった。コロナ禍での新たな試みとして注目されるオンライン開催に関しても、ウェブのプラットフォーム構築やオンライン販売などに対応できたのは、比較的大きな規模のアートブックフェアに限られており、対面でのコミュニケーションへの揺り戻しや、大規模になりすぎたフェアに対しての疑問も少なからず生まれている。

 

そこで、本特集では、近年新たに始まったアートブックフェアや、欧米のアートブックフェアを参照しつつ独自のコミュニティづくりを目指すアジア各国のアートブッ クフェアに注目してみることにした。中国、カナダ、台湾、UAE、シンガポール、タイ、ノルウェーの7つのフェアの運営団体にオンライン取材を行い、コロナ禍での開催状況や、フェア出展者の出版物から推薦タイトルを紹介してもらった。また、各国のフェアに参加経験をもつ出版関係者たちによる寄稿・インタビューを通じて、アートブックフェアの今日的な役割や、アートブックの流通や保存についての考察も試みている。

ここだけの話

地域の出版活動を支えるアートブックフェア

 今号の特集では、中国、カナダ、台湾、UAE、シンガポール、タイ、ノルウェーの7つのアートブックフェアを紹介しています。

 

 どのフェアも2010年代に始まったフェアで、先行する欧米やアジアのフェアからノウハウを学びつつ、地域の出版活動を盛り上げるためのさまざまなプログラムを開催しています。

 

 そんな中から、ここでは2018年に始まった中東初のアートブックフェア、FOCAL POINT(UAE)について紹介します。

スパイスの香りが漂う港町のアートブックフェア

 FOCAL POINTはUAEの第三の首長国シャルジャで開催されるアートブックフェアです。

 

 シャルジャはドバイと隣接する首長国で、近年はUAEの文化都市として博物館の設置やシャルジャ・ビエンナーレなどのアートイベントの開催に力を入れています。そうしたイベントを主催するシャルジャ・アート・ファンデーションが2018年に初めて開催したのが、FOCAL POINTです。

 超高層ビルが立ち並ぶドバイとくらべて、シャルジャの街にはアラブの伝統的な建築物や文化が残されています。FOCAL POINTも「ベイト・オベイド・アル・シャムシー」と呼ばれる1800年代にできた歴史的建造物を会場に開催されていて、広い中庭にブースが並ぶ開放的なフェアです。

 そんなオープンな雰囲気とは打って変わって、会場周辺には衣類や生地、食料品などを扱うマーケットが立ち並び、怪しげな雰囲気スパイスの香りが漂ってきます。フェアでたくさんの出版物を物色しているとあっという間に時間が過ぎてしまいますが、開催地のローカルな文化や食、街並みを楽しむものアートブックフェアを訪れる楽しみのひとつです。

 

 シャルジャはアルコールの販売が禁止。食べ物も日本人には馴染みのない味が多く、わたしはカレーばかり食べていました…。そんな苦い経験も、コロナ禍では懐かしい思い出です。

雑誌紹介

1953年の創刊以来、グラフィックデザイン、タイポグラフィを主軸に、古今東西のデザインの状況を世界にむけて伝え続けるデザイン誌。毎号異なる仕様とハイクオリティの印刷により最先端のヴィジュアルカルチャーを紹介しています。専門性・資料性の高いコンテンツに加え、マンガ・アニメ,ゲームといったサブカルチャーにデザイン的な視点から迫る企画など、間口の広さも魅力です。

商品名アイデア No.397 2022年 4月号

商品名(カナ)アイデア ナンバー397 2022ネン4ガツゴウ

編集者名アイデア編集部

判型A4変(縦297mm×横225mm)

特集:本との出会いかた 世界のアートブックフェアと流通/コミュニケーション
企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策、守谷めぐみ)

 

【特集参加アートブックフェア】
Shanghai Art Book Fair
Vancouver Art Book Fair
草率季 Taipei Art Book Fair
FOCAL POINT
Singapore Art Book Fair
Bangkok Art Book Fair
Bergen Art Book Fair

 

【寄稿】
アートブックフェアの近年 ボストンからサンフランシスコまで
文:クリストファー・スレボダ、キャスリーン・スレボダ

 

テンポラリーな本の場所としてのアートブックフェア
文:イム・ギョンヨン

 

ジッターヴェルクカタログ本との出会いの集積とアートライブラリー
インタビュー:ローランド・フリュー

 

【小特集】
答えのない問いの翻訳
「Which Mirror Do You Want to Lick?」東京巡回展 制作記録

 

綴じ込み冊子「Which Mirror Do You Want to Lick?」東京版
文:ベッツィ・ビックル、ジョン・スエダ

 

「Which Mirror Do You Want to Lick?」東京版
綴じ込み冊子 日本語対訳

 

Typojanchi 2021 Report

 

『世界を一枚の紙の上に』刊行記念鼎談リポート
世界に道しるべを示すために

 

【連載】
批評とコンテクスト 第1回
文:イエン・ライナム

 

NISSHA & IDEA Collaborative
デジタル印刷の創造力 第2回

 

インフォメーション、新刊紹介

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